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アジマティクス

ここをこうするとおもしろい

素数大富豪とは?初心者のためのルール&ちょっとしたコツ集

最近、とあるトランプゲームが話題です。

タイトルで明示しておきながら「とあるトランプゲーム」も何もないですが、それまで一部の数学好きにしか知られていなかった素数大富豪」。この素数を使ったトランプゲームが2017年に入ってから急速に数学好き以外にも広がりを見せています。

この記事は、素数大富豪をはじめて知った人が最初に見ることを期待して書かれたページです。「ルール」「ちょっとしたコツ&tips」「よくあるご意見&ご質問」の3部構成になっていますので、ルールはすでに知ってるよ!って方は後半からお読みください。

ルール

用意するもの

トランプ:一組以上

プレイヤー:2人以上

ゲームの流れ

もっとも基本的には、このゲームは「場と同じ枚数でより大きい素数を出していく」というゲームです。勝利条件は相手より早く自分の手札をなくすこと。

素数とは「自分より小さい正の数(1以外の)で割り切れない数」のことを言います。例えば「5」という数は自分より小さい4、3、2で割ると小数点以下が出てきてしまって割り切れないので、素数です。対して例えば「6」だったら、3や2で割り切れてしまうので素数ではありません。5は出せるけど6は出せない、というわけです。素数大富豪をプレイするにはこの理解で十分ですが、より厳密な素数の定義を知りたい方はよろしくおググりください。

素数 - Wikipedia

ちなみに命名元のゲーム「大富豪」とはほぼ別ゲーなので大富豪のルールを知っている必要はありません。

まずプレイヤーにカードを配ります。このゲームは山札が必要なので、全部配りきるわけではなく決まった枚数を均等に配ります。枚数の指定はありませんが7〜11枚程度だといい感じです。

じゃんけんで最初に出す人を決め、ゲーム開始です。

カードの出し方(基本)

前述の通り、素数が出せるわけです。場に何も出ていないとき、最初の人は好きな数を出せます。例えば最初の人が2と出したら、次の人は「同じ枚数でより大きい素数」の5や7などを出せます。ここで次の人がキング、つまり13を出したとします(キング、クイーン、ジャックはそれぞれ13,12,11として扱われます)。一枚出しでこれより大きい素数は存在しないため、場が流れます。そして次は13を出した人からスタートし、この人が自由に出せるようになる、というわけです。 

さて、このままだと4とか6とかQみたいな偶数カードを出しようのない悲しみのゲームになってしまいます。もちろんそんなゲームなわけはなくて、素数大富豪では「2枚出し」「3枚出し」...「n枚出し」ができるようになっています。

例えば4と7を並べて「47」、10と3を並べて「103」(足して13ではなく、そのまま横にくっつけます)、6とQと1で「6121」などのようにして出すことができます。ちなみにこれらは全部素数です。

2枚出しの流れを具体的に見てみると、まず最初の人が23を出すとする。次が109。次の人がQKで1213。ここで全員がパスすると、場が流れてその人から開始、という風になります。このゲームでは枚数で縛りが発生するので、場に2枚出ているときは次の人も2枚でしか出せません。

もちろん、3枚出し、4枚出し、5枚出し...といくらでも出すことができ、一度に出せる枚数の制限はありません。

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(例:5枚出しで139753が出ている)

自分のターンでできること

「全員がパス」としれっと言ってしまったので、ここで自分のターンでは何ができるのかを説明しておかなくてはなりません。

自分のターンではもちろんカードを出す権利があるわけですが、カードを出さずに「パス」を選んでも構いません。ペナルティはありません。出せる素数がないときはもちろん、出すことはできるけど、後々のためにカードを温存しておきたいときなどにも使えます。ある人が何かカードを出して、それ以外の人が全員パスした場合、場が流れます。さっき言ったのはそういうことでした。

そしてさらに、自分のターンではいつでも「山札から一枚引く」ことができます。手札が22446688とかそんな感じで偶数しかない場合、このルールがないと詰んでしまいます。

「いつでも」というのはつまり引いてから考えてもいいということです。「手札が1と2かぁ〜21は素数じゃないしいなあ厳しいなあパスしようかなあ、いや待てよ、山札から一枚引こう! よし10を引いたぞ、1021が出せる!」みたいなことが認められているわけです。

「山札から引くか否か」×「パスするか否か」で4通りの行動が取れるということになりますね。

カードの出し方(特殊) 

合成数出し

カードの出し方はまだ他にもあります。特にこのゲームを強く特徴づけるものとして、合成数出し」というものがあります。

例えばこのゲームでは一枚出しとして「6」を出すことができます。え? 6は素数じゃないのに? どういうこと?

6を出すには、6の素因数である2と3を素因数場に捨てれば、2×3の答えである6を出すことができます。

つまり、手札に「出したいカード」と「そのカードのすべての素因数」があれば、合成数でも出すことができるというわけです。

もう一つ例をあげましょう。手札に2、2、2、7、8がある場合、2と2と7とを捨てて、28(つまり、2×2×7です)を「2枚出し」として出すことができます。2枚出しなのに5枚も一気に消費できておトク!!ってなわけですね。

注意しなければならないのは、4×7として28を出すことはできないということです。4は素数ではないからですね。ちゃんと素因数分解しなければなりません。

さらにもう一つ、例えばあなたが「16」を出したかったとします。16は2×2×2×2なので、2が4枚も必要で大変です。こんなとき、2⁴(2の4乗)として16を出す、ということも認められています。つまり2と4と1と6があれば、2と4を捨てて1と6で16が出せる、というわけですね。

素因数場に捨てられたカードは場が流れるときに一緒に流されます。

この「合成数出し」、実は意外と重要なルールです。素数大富豪ってつまり「役が無限にある花札」みたいなもんですから、別にそれだけなら「フィボナッチ数大富豪」や「ラッキー数大富豪」でもよかったわけです。しかしこの合成数出しによって「素数は無条件で出せる、素数じゃなくても素因数分解をすれば出せる」ということになりました。まさに素数素数としての性質をフルに活用したルールだといえるでしょう。このルールこそが素数大富豪を素数大富豪たらしめていると言っても過言ではないと思います。

②グロタンカット

アレクサンドル・グロタンディーク「57は素数

と、言ったかどうかは定かではありませんが、 20世紀を代表する数学者であるグロタンディーク(Alexander Grothendieck, 1928 - 2014)が、57は素数ではないのに素数だと間違えてしまった...という有名なエピソードがあります(ちなみに57=3*19)。ここから、一種のジョークとして、57という数には「グロタンディーク素数とう称号が与えられています。このエピソードに敬意を表して、素数大富豪ではこのグロタンディーク素数に特別な役割を与えているのです。

普通の大富豪では「8切り」という、8を出した瞬間場が流れて自分のターンにできる、というルールが採用されることがあります。その「8切り」に相当するルールがこの「グロタンカット(グロタンディーク素数切り)」です。

場に出ているのが2枚で57より小さいとき、57を出して場を強制的に流すことができます(他の枚数では出しようがないので2枚出し限定です)。このとき「グロタンカーーーーーーット!!!」と叫びながら出すと必殺技みたいで気持ちいいので推奨されています。

ラマヌジャン革命

よくある質問として「革命はないの?」というのがあります。やはり「大富豪と言えば革命」という意識があるのでしょう。このゲームの誕生当初は革命はなかったのですが、そういった声を受けて後から追加された新ルールがこの「ラマヌジャン革命」です。

ラマヌジャンのタクシー数」と呼ばれる1729は、合成数(1729=7*13*19)でありながら、精度の高い素数判定アルゴリズムにおいて素数だと間違って判定されてしまう「絶対擬素数でもあります。いやなにその名前カッコよすぎやろ

そんな1729に敬意を表して、こちらにも特別な役割が与えられています。

4枚出しとして1729を出すと、今までとは逆に小さい素数が強くなります。まさに革命です。このルールの追加により、今まであまり脚光の当たらなかった素数たちにもステージに立つ機会が与えられたというわけです。素晴らしいですね。

こっちはグロタンみたいに叫ばずに「──ラマヌジャン革命」と静かに、それでいて仰々しく言うとカッコいいと思います。

その他の留意点

ジョーカーの扱い

ジョーカーは0から13までの好きな数として使えます。そのため例えば8とジョーカーを出したときは、「89」とか「811」とか宣言しながら出さなくてはなりません。

「0」も出せることで例えば「1009」みたいなジョーカーなしでは出し得ない素数にも手を差し伸べているわけです。

また、1枚出しのときに限りジョーカーは最強のカードとして扱えます。つまり13にも勝てる、と。これは別にジョーカーが17や19として使えるというわけではなく、ただ1枚出しのときは最強なんだよ、ということです。

②ペナルティ

出した数が素数でなかったり、素因数分解の計算が間違っていたりした場合はそのプレイヤーはペナルティを受けなくてはなりません。

ペナルティを受けるプレイヤーはまず出した分のカードを手札に戻し、さらにその枚数と同じ枚数だけ山札から引きます。3枚出して間違えたらその3枚を戻してさらに山札から3枚引くということです。

調子に乗って11枚とか一気に出すことはもちろん一発であがれてしまう可能性もありますが、素数でなかったときに大量のカードを引かなくてはならないという大きなリスクもあるわけです。まさにハイリスク・ハイリターン。

ちなみにこのゲーム、カードを出す前にアプリなどを使って素数判定することは禁止されています。素数かどうかわからないけど一か八か出してみよう!からの、よっしゃ素数だった!という興奮も、このゲームの醍醐味の一つなのです。これはこうやって大きなペナルティが課されているからこその興奮といえるのかもしれません。

素数大富豪のルールは以上です。実はネット上にはすでに素数大富豪の詳細なルールが存在します。このゲームの考案者その人である数学者、関真一朗氏が自ら書かれたものがこちら(pdfへのリンク)にあるのですが、こちらのルールブックは正確さ、厳密さ、取りこぼしのなさを希求して書かれたもののため、初心者フレンドリーではありません。私がこの記事を書いた時点では、初心者フレンドリー、かつ網羅的なルールブックがネット上にあまり見当たらなかったため、今回筆をとった次第でございます。こちらの記事がみなさまの素数大富豪活動の一助になれば幸いです。

ちょっとしたコツ&tips

そうは言っても、ルールを理解したというだけでは実際どう動いたらいいものか不安です。ここからは、そんな初心者の方が知っておくと便利なコツ、tipsをいくつかご紹介します。

・実際どうやって出す前に素数判定してんの?

与えられた数が素数かどうかがすぐに分かるようなアルゴリズムは今のところ存在しません。地道にその数以下の素数で割っていくしかないのです。例えば1211などは7で割ってみると割り切れちゃうので、あコリャ出せないな、と判断できるわけです。

・3の倍数判定法

とはいっても、いちいち割らずに判定できるようなものも中には存在します。その代表格が「3の倍数」です。

証明は省略しますが、「その数のすべての桁を足すと3の倍数になるならば、その数自体も3の倍数」という法則があります。

例えば42357などは、地道に3で割ろうとすると大変ですが、それぞれの桁を全部足すと21となり、これは3の倍数なので42357も3の倍数であると判定できます。

自信のない数を出す前に最低限、3の倍数かどうかだけでも判定しておくとよいでしょう。

・2枚出し強い順

2枚出し素数で大きいものは上から順に1213、1013、911、811、613となってます。より大きい素数を出せばそれだけ自分の手番にできる確率が高いので、大きいものを知っておくと有利です。

・一の位になるのは1,3,7,9のみ

出そうとしている数の一の位が偶数だと、その数全体も偶数です。一の位が5だと、その数全体は5の倍数です。というわけなので、一の位として使えるカードは1か3か7か9に限定されます。これを知っているだけでもけっこう違います。

・四つ子素数

例えば100台は、一の位に1、3、7、9のどれをつけても(すなわち、101、103、107、109)全部素数になります。このような素数の4つ組を「四つ子素数」といい、ほかにも190台や820台などがあります。4つもいっぺんに憶えてしまえるのでお得ですね。

・「パッと見素数」に気をつけろ!

87や91のように、「パッと見で素数に見えちゃうけどその実、合成数」というやつらのことを「パッと見素数(glance prime)」といいます。パッと見素数は本当にヤバいです。今までどれだけパッと見素数に足元をすくわれた人を見たかわかりません。こちらについて詳しくは以下の記事をご参照ください。

motcho.hateblo.jp

・何を残すかのほうが大事!

素数大富豪では「何を出すか」ももちろん大事ですが、「何を残すか」の方がむしろ大事です。その場しのぎに、5が出てるから7! Jが出てるからK! とやっていては、最終的に手札に偶数ばかりが残った、あるいは最後の一枚が偶数であがれない! ということになりかねません。 出せるかどうかだけでなく、あがれるかどうかにも気を配ってやるとよいでしょう。

・偶数消費型素数を覚えよう

このゲームではとにかく偶数カードが邪魔になります。なので例えば「24683」のように偶数を大量に消費できる素数を覚えておくと、有利にことを運べます。

・1枚出しは逆にキツい 

そんなわけなので、偶数を消費しようがない「1枚出し」は、計算しなくていいので楽ですが、貴重な奇数を消費してしまうという点においてはキツいです。しかしこれは1枚出しで攻めれば相手の奇数を奪うことにもなるということなので、戦略としてうまく1枚出しを使っていきましょう。

・故意にペナルティを受ける

手札に偶数しかなくてにっちもさっちも行かない場合、故意に合成数を出してペナルティとして大量に新たなカードを手に入れる、という戦法が考えられます。もちろんカードが増えるので勝利からは遠ざかるかもしれませんが、同時に選択肢も増えるのでやる価値はあります。

・さっき出たのを覚えておこう!

初心者のうちは、とにかく知っている素数が少なすぎることがどうしても不安要素になってしまいます。そんなときは、試合の中で一度出た素数を覚えておくとよいでしょう。戦いの中で成長すればいいのです。 

まだまだほかにもtipsはたくさんありますが、今回はこれぐらいにしておきます。tipsを共有してみんなで強くなりましょう。

よくあるご意見&ご質問

 ・1は素数ですか?

1は素数ではありません。もし1を素数と定義してあると「すべての自然数はただ一通りに素因数分解できる」、すなわち素因数分解の一意性」が担保できなくなっていろいろと都合が悪いためです。

このことは素数大富豪においても重要で、素因数分解の一意性が保たれていないと例えば合成数出しとして6を出すときに「2×3」としても「1×2×3」としても「1×1×2×3」としてもOKになってしまい、1のカードが好きなだけ出せるようになってしまいます。

 ・出された数が素数かどうかどうやって判定してるの?

巷にはスマホ1つで素数判定ができる素数判定アプリが溢れています。お好きなものをお使いください。

素数大富豪用にアジャストされたようなものもあります。

とろろ人狼

・一番最初に全部出しちゃっていきなりあがることもありうるわけ?

全くもってありえます。しかし、ガウス素数定理より、数が大きくなればなるほど素数はどんどんまばらになっていくことが知られています。一気に出してみた数が素数である確率はかなり低いといえるでしょう。よくできてますね。

素数知らないからこのゲーム無理だわ

大きな勘違いです。このゲームは素数をたくさん知っている人がやるためのゲームではなく、むしろ素数なんて全然知らない人が新たな素数に出会うための「出会い系ゲーム」なのです!!

この記事を読んだ方ならすでにいくつかの新たな素数と出会っていることでしょう。素数大富豪をプレイすれば毎試合毎試合新たな素数に出会うことができるのです! こんな幸せなことがあるでしょうか。

・文系だから無理だわ

なんでそこまで簡単に自分の限界を規定してしまえるのかわからない

 

最後に宣伝です

さて、そんな素数大富豪ですが、来る4/29、30日に幕張メッセで開催される「ニコニコ超会議2017」の「超ゲームエリア」に出展しています! つまり幕張に来てくれれば素数大富豪を遊ぶことができます!

www.chokaigi.jp

この記事を読んでやってみたくなったけど相手がいない...。そんな方は是非お越しください! お待ちしています! では幕張で!

【追記】

超会議での出典、大盛況のうちに2日間を終えることができました! 来てくださったみなさんありがとうございました!

そしてなんとこちら、ネットニュースサイト「ねとらぼ」さんに取材を受けまして、素数大富豪が掲載されました。

nlab.itmedia.co.jp

素数大富豪の醍醐味を余すことなく紹介してくれてる! こちらもよろしければぜひご一読ください。